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棚卸資産会計

このトピックでは、棚卸資産とその会計基準を取り上げて説明します。

棚卸資産とは

棚卸資産とは、企業が販売する目的で一時的に保有している商品・製品・原材料・仕掛品の総称です。一般的には在庫と表現されることもあります。

棚卸資産の範囲

棚卸資産とは、次のいずれかに分類することができます。

 

棚卸資産の取得原価

購入の場合

棚卸資産を購入した場合の取得原価は、購入代価+付随費用で決定することになります。

付随費用には「外部付随費用」と「内部付随費用」があり、外部付随費用には、運賃、購入手数料、関税などが、内部付随費用には、購入事務費、検証費、保管費などがあります。

製造の場合

棚卸資産を自社生産した場合の製品などの取得原価は、適正な原価計算の手続きに従って算出された価額によって決定されます。
原価計算の制度は、大別すれば実際原価計算制度と標準原価計算制度とに分類することができます。

実際原価計算で実際の取得価格ではなく予定価格などを用いた場合、あるいは標準原価を用いた場合、そこで計算される取得原価と実際発生額との間に発生する差額を「原価差異」とよびます。原価差異が生じる場合は、その再適切に処理して製品原価および損益を確定することが求められます

贈与・交換等の場合

贈与や交換によって棚卸資産を取得した場合は、受け入れた棚卸資産の適正な時価や、公正な評価額をもって取得原価とします。

棚卸資産の費用配分

棚卸資産は、当期に販売、消費された分が費用になり、損益計算書に費用として計上されます。当期には消費されず、将来に繰り延べられた部分は、棚卸資産として貸借対照表に資産計上されます。

棚卸資産の取得原価は、販売または消費された数量に単価を乗じることで行われるため、費用配分の手続きは、数量計算と金額計算からなります。

 

数量の計算

棚卸資産の数量計算の代表的なものに、継続記録法(帳簿棚卸法)と棚卸計算法(実地棚卸法)があります。

単価の計算

企業が仕入れる棚卸資産は、毎回同じ価額ということはありません。値引や割戻が発生することもありあすし、仕入先が違えば同じものでも価格が異なることがあります。
そのため、消費、販売された棚卸資産の取得原価の算定や貸借対照表価額の算定をどのような方法で行うのかが重要となります。
企業会計原則注解(注21)には、棚卸資産の貸借対照表価額の算定方法として、以下の方法があげられています。

  1. 個別法 
    個別法とは、取得原価が異なる物ごとに区別して記録する方法です。多品種を扱う企業の場合は手間のかかる記録方法になりますので、あまり適当ではありません。宝石や貴金属、自動車などの比較的高価で個々に在庫管理が可能な棚卸資産に適した方法です。
  2. 先入先出法 
    先入先出法とは、FIFO(First In First Out)ともよばれ、先に受け入れたものから順に払い出すという仮定の下に記録していく方法です。
  3. 後入先出法 
    後入先出法とは、LIFO(Last In First Out)ともよばれ、最近受け入れたものから先に払い出す、という仮定のもとに記録していく方法です。
  4. 平均原価法 
    平均原価法とは、取得した棚卸資産の平均原価を算定し、この平均原価によって期末の棚卸資産価額を求める方法です。平均原価法には、「単純平均法」「移動平均法」「総平均法」があります。
  5. 売価還元法 
    売価還元法は「小売棚卸法」とも呼ばれています。これは、異種商品を一つにプールして加重平均を行う方法で、プールされた棚卸資産の売価合計額に原価率をかけて期末棚卸資産価額を求めます。
  6. 最終取得原価法 
    最終取得原価法は、最終取得原価(期末に最も近い日に受け入れた商製品の価額)を期末棚卸資産のすべてに適用することによって算定する方法です。
  7. 基準棚卸法 
    基準棚卸法は、「基礎有高法」「正常有高法」ともよばれます。これは生産・販売活動を展開するうえで最低限必要な棚卸資産を基準量とします。基準量は、基準棚卸法を採用したときの原価を適用し、価格の変動に関係なくその価額で評価していきます。

棚卸資産の期末評価額

棚卸資産の評価は原則として取得原価で行われます。したがって期末に貸借対照表に計上される棚卸資産の価額は取得原価となります。しかし、棚卸資産の時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復する可能性があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければなりません。